近年、東洋医学のはりきゅうが西洋医学からも見直され、取り入れられています。WHO（世界保健機関）も、はりきゅうの効果を認めているのです。はりきゅうは慢性的な痛みの施術に効果がみられます。ただし、施術が長引くこともあり、気になるのが施術費です。医療保険適用が認められればよいのですが、そこが不明確です。今回ははりきゅう施術に保険適用が可能なのか調べてみましょう。

はりきゅうとは

はりきゅうは「鍼灸」と書き、「しんきゅう」と呼ばれることもあります。患者さんの疾患や身体の不調に対して、改善効果がみられる経穴（ツボ）に金属の極小の鍼（はり）を刺す「はり」と「もぐさ」をツボの上に置いて燃やす「きゅう」があるのです。

人体には361か所のツボがあり、患者さんの疾患や不調に効果が期待できるツボを選んで刺激します。ツボを刺激することで、人が本来持っている病気や不調を治す自然治癒力と元気を取り戻す施術法です。

はりきゅうともに国家資格

はりきゅう施術を行う鍼灸師とは、正確には「はり師」と「きゅう師」の2種類です。その両方の国家資格を取得した人が「鍼灸師」とよばれます。はり師もきゅう師も主にツボを刺激するなど、共通した施術が多いことで、両方の資格を取得して鍼灸師として働く方がほとんどです。

また、はり師ときゅう師ともに厚生労働省が認定した鍼灸師専門学校などで必要なカリキュラムをすべて修了し、国家試験に合格することで、資格が取得できるのです。それだけに、正確で安心な施術が受けられます。

はりきゅう施術は保険適用もある

身体の不調改善に期待できるはりきゅう施術ですが、気になるのは施術費です。はりきゅうは1回で終了するケースは少なく、複数回通院することが多いだけに、医療保険が使えると一部負担位なることもあり、金額面で大いに助かるのです。この章では、はりきゅうの保険適用について紹介します。

はりきゅうの施術を受ける場合に、医療保険の適用が可能となるケースがあります。ただし、保険適用で施術の対象になるためには、以下2つの要件のどちらも満たす必要があるため注意しましょう。

保険施術の対象となる傷病は限られる

はりきゅうの保険適用が認められる疾患は、基本的には次の6個の疾患です。

• 神経痛：坐骨神経痛・三叉神経痛など
• リウマチ：慢性で各関節が腫れて痛むもの
• 腰痛症：慢性の腰痛
• 五十肩：慢性的に肩の関節が痛く、腕が挙がらないもの
• 頚腕症候群：頚から肩、腕にかけての痛みや痺れなど
• 頚椎捻挫後遺症：むち打ち後遺症など

基本的に慢性的な痛みや、医師による施術や施術で改善できなかったケースに限り、はりきゅう施術の保険対象となります。急性の痛みについては保険適用の適応外です。

医師が施術に同意していること

はりきゅうで保険適用を受ける場合は、最初に担当する医師が施術を行った上で他に有効な施術や、施術手段がないなどの正当な理由があり、さらに鍼灸師による施術を許可した場合に限り保険適用が認められます。

このような経緯から、はりきゅう施術と医療機関での施術の併給は認められません。病院への通院だけでなく、医師から薬などを処方された場合も、医科併給に該当するため保険適用外になります。

鍼灸院での保険請求の仕組み

第2章の条件をクリアした場合に、はりきゅう施術に保険が適用されますが、施術を受ける鍼灸院が保険施術を取り扱っていなければ、保険が適用されないのです。まずは、受診する鍼灸院が保険の取り扱いを行っているか確認が必要です。

鍼灸院が保険の取り扱いを行っているなら、その鍼灸院で「同意書」の用紙をもらいましょう。同意書をかかりつけの病院、医院へ持参し、かかりつけ医師に同意書に必要事項を記入、押印してもらいます。その同意書と保険証を持って鍼灸院へ提出するのです。同意書は医師が保険で「はり・きゅうの施術」が受けられることを認めるための書類になります。

はりきゅうの保険適用の注意点

はりきゅうの保険適用施術は、最初に同意書を受け取った「かかりつけ医師」から約6か月ごとに同意をもらえば、症状が改善するまで、はり・きゅうの施術を継続できます。施術回数に制限はありません。注意すべき点は、鍼灸院で保険施術を受けている期間中は、同じ病気で病院や医院で施術や投薬を受けられない点です。医院で施術を受けると、はり・きゅうの施術は保険では受けられません。

また、はりきゅうの保険施術の手続きは一般的には鍼灸院が行いますが、加入している保険組合によっては、患者さん本人が手続きをしなければならない場合もあり加入する保険組合や鍼灸院に確認が必要です。

まとめ